最近の7歳息子の不思議発言の一つ。
「カレーライスはご飯にライスをかける」
何度聞いても、ご飯にかけるのはカレーではなく、ライスらしい。
それでは白米の上に白米を重ねただけである。カレーライスというより、ライスライスである。
しかし、本人がこれほど自信を持って言い張るのなら、単なる言い間違いではないのだろう。
大人にとって、「カレーライス」は比較的分かりやすい複合語である。
カレー + ライス という二つの要素に分けられ、「ライスにカレーをかけた料理」と理解される。
だから、「ご飯に何をかけるの?」と聞かれれば、「カレー」と答えるのが当然である。
けれど、息子が「カレーライス」ということばを、同じように分解して理解しているとは限らない。
息子にとっての「カレーライス」は、「カレー」と「ライス」を組み合わせて作ったことばというより、最初から一つの料理を指す、ひとかたまりの名前なのかもしれない。
用法基盤モデルでは、子どもは最初からことばを抽象的な文法規則に分解して覚えるのではなく、実際に耳にした表現を、ある程度まとまりのある形で習得していくと考える(Tomasello, 2003)。
「カレーライス」も、息子にとっては「カレー+ライス」ではなく、まずは「カレーライス」という一つのまとまりとして身についた可能性がある。
その後、ことばの一部に「ライス」が含まれていることに気づき、「カレーライス」の略称としてそれを料理の説明に使おうとした。しかし、「ライス」が料理のどの部分を指すのかについては、大人と同じ分析にまだ至っていないのかもしれない。
子どもの不思議な発言を聞くと、私たちはすぐに正しい表現に直したくなる。
もちろん、ご飯にかけるのはカレーである。
しかし、「ご飯にライスをかける」という発言を少し立ち止まって眺めてみると、子どもがどのようにことばを分け、料理を分類し、目の前の世界と名前を結びつけているのかが見えてくる。
「カレーライスは、ご飯にライスをかける」
料理としては、かなり炭水化物が多い。
しかし、ことばの作り方としては、息子なりにちゃんと考えられているのかもしれない。
今日も息子は、ご飯にライスをかけている。私には相変わらず、カレーにしか見えないのだが。
Tomasello, M.(2003)Constructing a Language: A Usage-Based Theory of Language Acquisition. Harvard University Press.