寝る前、ふと息子が言った一言。
「ろくろっくびはさ、顔が長いんだよね〜♪」
か、顔が長い……?
顔が長いろくろ首を想像して、思わず笑いそうになる。
おそらく彼は「顔が長く伸びる」もしくは「首が長い」という意味で言ったのだろうけれど、顔が長いろくろ首……一周回ってホラー感は消え、もはやお笑いの世界である。
でもこれ、よく考えるととても興味深い。
おそらく息子は、ろくろ首の特徴を「首」ではなく、「高く伸びた顔」と認識した結果、こう表現したのだろう。
このように、何かを最も目立つ特徴(=参照点)で表すことをメトニミー(metonymy)と言う。
たとえば、「ろくろ首」を「首長」と表すのもその一例。
今回の息子の発言は、参照点の誤認識によって起こったメトニミーの「ズレ」と言えるかもしれない。
では、このメトニミーの感覚はいつ身につくのか。
意外にも早く、3歳頃には絵本を見ながら、適切な参照点を選び、聞き手に伝えることができる子が多い。
たとえば、帽子をかぶった人を「帽子」と呼ぶことができる。
しかし面白いことに、メトニミーは年齢とともに順調に伸びていくわけではない。
4-5歳で一度正答率が下がり、その後また上がるという、U字型の発達パターンを描くことが報告されている(Falkum, Recasens, & Clark, 2017)。
4-5歳になると、メタ言語能力(言語を俯瞰的に捉え、コントロールする力)が発達してくるため、
「考えすぎる」ことでかえって間違えるのではないかと推測されているが、真相はまだ謎。
顔が長くなるろくろ首を思い浮かべた息子の脳内、
そのプロセス、もし覗けるならぜひ覗いてみたい!
Falkum, I. L., Recasens, M., & Clark, E. V. (2017). “The moustache sits down first”: On the acquisition of metonymy. Journal of Child Language, 44(1), 87–119.